転職を考えるとき、多くの人は「年収アップ」を最優先に考えます。しかし、本当に転職の満足度を左右するのは給料なのでしょうか。
米国連邦準備制度理事会(FRB)が実施する「家計経済・意思決定調査(SHED)」を用いた研究では、2021~2023年に転職した2,592人を分析し、「転職後に仕事が良くなった」と感じる要因を調査しました。
その結果、多くの人が想像するものとは異なる、興味深い事実が明らかになりました。
年収だけでは「良い転職」は判断できない
転職サイトでは「年収○万円アップ」が大きく取り上げられます。しかし、米国での研究結果では異なる分析が明らかになりました。
給与や福利厚生の変化だけで転職後の満足度を判断すると、約30%の確率で実際の評価とは異なる結果になってしまうことが分かりました。
What makes a job better? Survey evidence from job changers
つまり、給料だけを見て「この転職は成功だった」と判断すると、約3人に1人は実際の満足度と一致しないということです。
研究では、仕事の評価には以下のような要素も大きく関係していました。
- 仕事への興味
- ワークライフバランス
- 昇進機会
- 身体的負担
転職先を選ぶ際は、「年収」だけではなく、仕事全体を見る必要があることが分かります。
転職満足度を最も左右したのは「仕事への興味」
今回の研究で最も印象的だった結果がこれです。
特に注目すべきなのは、転職後の満足度に最も大きく影響していたのは、給与や福利厚生ではなく「仕事への興味」だったことです。
What makes a job better? Survey evidence from job changers
また、学歴によっても傾向に違いが見られました。高卒以下の人では、給与や福利厚生が良い仕事ほど、仕事内容や働きやすさなど他の条件も良い傾向がありました。一方、大学卒以上では、そのような関連性はそれほど強くありませんでした。
What makes a job better? Survey evidence from job changers
さらに分析では、
- 仕事への関心の向上: 満足度が 27%増加
- 給与と福利厚生の向上: 満足度が 19%増加
という結果でした。つまり、「仕事がおもしろいと思えること」の方が、給料が上がることよりも転職満足度への影響が大きかったのです。
もちろん給料は重要です。しかし、「毎日やりがいを感じられる仕事」は、それ以上に人の幸福感へ大きな影響を与えていました。
ワークライフバランスも満足度を大きく左右する
給料や仕事内容だけではありません。研究では、ワークライフバランスの改善によって満足度が18%増加するという結果も示されました。
さらに興味深いのは、ワークライフバランスや給与が悪化しても、仕事全体には満足している人が一定数存在したことです。仕事には様々な要素があります。
- やりたい仕事ができる
- 良い上司がいる
- 将来性がある
- 人間関係が良い
これらが改善されれば、一部の条件が悪くなっても「転職して良かった」と感じる人は少なくありません。
年代や家族構成によって価値観は変わる
研究では、すべての人が同じ価値観ではないことも分かっています。
年代による違い
- 若い世代ほど: 給与アップを重視する傾向があります。
- 年齢が高くなるほど: 仕事への興味がより重要になります。
つまり、20代では「収入」が重要でも、40代・50代になると「やりがい」の方が満足度を左右するようになります。
子育て世代はワークライフバランスを重視
研究では「13歳未満の子供を持つ親」を対象とした分析も行われており、特に母親ではワークライフバランスの改善が転職満足度へより強く影響していました。子育て中の人ほど、「早く帰れる」「柔軟に働ける」という価値が非常に大きくなることが分かります。
学歴によって転職の価値も変わる
研究では学歴別の分析も行われました。
高卒以下の人では、給与や福利厚生が良い仕事ほど、仕事内容や働きやすさなど他の条件も良い傾向がありました。
つまり、高卒以下の人では、給料や福利厚生が上がる会社ほど「仕事内容」「昇進機会」「ワークライフバランス」まで一緒に改善するケースが多いことが分かりました。
一方、大学卒以上では、異なる結果が見られました。
学士号以上の学位を持つ労働者では、給与と福利厚生と他の仕事の特性との相関関係は弱い。
つまり、高学歴の人は、
- 給料が高い仕事でも仕事内容が面白いとは限らない
- 給料が高くてもワークライフバランスが良いとは限らない
- 給料が高くても昇進しやすいとは限らない
ということです。
なぜ学歴でこのような違いが生まれるのか?
研究者は、高学歴の人は選べる仕事の幅が広く、さまざまな条件の仕事が存在するためだと考えています。例えば、
- 年収は高いが激務のコンサルティング会社
- 年収は高いが単調な仕事
- 給料は高いが、仕事内容がルーティンで面白くない(仕事への関心が低い)
- 報酬は良いが、激務でワークライフバランスが崩壊している
- キャリアの選択肢や専門性が狭まってしまう
このように、「給料」と「仕事の質」が必ずしもセットになっていないため、給与だけでは仕事全体の良し悪しを判断できません。
高学歴の人ほど「給料」と「仕事の質」は切り離されている傾向があり、転職では年収だけでなく、仕事内容や働き方、やりがいなども含めて総合的に判断することが重要だと考えられます。
単に「前職より条件が良いか」を見るのではなく、「お金以外の要素(仕事への興味や環境)」が自分の価値観と本当に噛み合っているかを個別に見極めることが、満足度の高い転職を成功させるための最大のカギとなります。
私たちが転職で本当に見るべきもの
この研究から分かることは非常にシンプルです。転職を成功させたいなら、「給料が高い会社」ではなく「自分が毎日気持ちよく働ける会社」を探すことです。
年収100万円アップでも、仕事がつまらなければ満足できない可能性があります。逆に、年収アップが小さくても、好きな仕事、良い人間関係、ワークライフバランスが手に入れば、人生全体の満足度は大きく向上するかもしれません。
まとめ
今回の研究で特に印象的だったポイントを整理します。
| 調査から分かるポイント | 詳細 |
| 年収だけで判断しない | 給与だけでは、転職の満足度を30%の確率で誤って予測してしまう。 |
| 仕事への興味が最重要 | 給与以上に「仕事への関心(面白さ・やりがい)」が満足度を大きく左右する(満足度+27%)。 |
| 働きやすさも大きな要素 | ワークライフバランスの改善も満足度を押し上げる(満足度+18%)。 |
| 価値観は人それぞれ | 若年層は給与、高年齢層や子育て世代はやりがいやワークライフバランスをより重視する。 |
転職活動では、「いくら稼げるか」だけに目が向きがちです。しかし、この研究は、本当に大切なのは「毎日その仕事を続けたいと思えるかどうか」であることをデータで示しています。
次に転職を考えるときは、年収だけでなく、「この仕事は自分にとって面白いか」「長く続けたいと思えるか」という視点もぜひ加えてみてください。
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